※管理栄養士資格を持つライターが書いています。
鉄分を摂取するためによい方法をお探しではありませんか?鉄の塊を料理に使うと効果があるという情報がありますが、本当かどうか気になっている方も多いと思います。
この記事では鉄の塊、通称『鉄玉子』が本当に効果があるのかご紹介します。使い方やお手入れ方法まで詳しく説明していますので、ぜひ最後まで読んでください。
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鉄玉子とは?
鉄玉子とは南部鉄器を玉子型に加工した鉄の塊を指します。南部鉄器とは岩手県の伝統工芸品で、鉄瓶や鉄鍋、風鈴などが有名です。
やかんに鉄玉子を入れてお湯を沸かせば、鉄が溶け出して摂取できるという商品となっています。
1,000円前後で販売されており、手軽に鉄の摂取が可能なロングセラー商品です。一般的な大きさは高さ5cm、横幅3.5cm、重さは200g前後。
魚や野菜、キャラクターの形に加工された鉄玉子も販売されており、この場合は玉子型ではないため「鉄玉」と呼ばれています。
鉄玉子は危険・副作用は?
鉄玉子について調べると、「危険」「副作用」といった気になるワードを目にして不安に思った方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、毎日鉄玉子を使っても危険や副作用はなく、健康被害はありません。
「危険「副作用」と検索される理由としては2つあります。
鉄の摂りすぎへの不安
1つ目は「鉄の摂りすぎに対する不安」です。
毎日鉄玉子でお湯を沸かす、または料理を作るとなると、溶け出す鉄の量によっては推奨される摂取量を超えて過剰摂取になるのではないか、という懸念の声も。
しかし、鉄分の推奨摂取基準に対して、鉄玉子から溶けだす鉄は微量であるため、毎食摂っても推奨される摂取量を上回る可能性は極めて低いです。安心して鉄玉子を毎日使ってください。
サビへの不安
2つ目は「サビに対する不安」です。鉄玉子を繰り返し使っていると赤サビが出てきます。
詳しくは後述しますが、赤サビについても健康被害が出ることはないので安心してください。
鉄玉子のサビは体に悪い?
鉄玉子を繰り返し使っているとやがて赤サビが出てきますが、そのまま使っても健康に対する害はありません。
ただ、赤サビが付いた状態で使用すると味や匂いの変化が起こりやすく、食味や香りに影響する可能性があることは知っておきましょう。
赤サビは鉄と酸素が結びつき、水酸化第二鉄・オキシ水酸化鉄・酸化第二鉄、などに変化したものです。
鉄は酸素や水と次々に結合してしまうので、放置していると徐々に酸化して赤サビが増えていきます。
使用方法やお手入れの方法によって赤サビの出やすさは変わってきます。特に食酢に触れさせると酸化しやすく赤サビが出やすいので注意しましょう。
鉄玉子から出る鉄の量
鉄玉子から溶けだす鉄の量はどの程度か気になっている方も多いと思います。
水1Lに鉄玉子を1つ入れた場合、沸かした時間ごとの溶出量を以下に記載します。
・沸騰時 ⇒ 0.042mg
・沸騰から3分後 ⇒ 0.050mg
・沸騰から10分後 ⇒ 0.069mg
鉄が溶けだす量は加える調味料によって変わってきます。
溶けだす量を増やすには、食酢を加えるのが効果的です。鉄は酸性の液体に入れると溶けやすくなる性質があります。
他にもトマトケチャップやレモン汁なども酸性の調味料に該当しますので鉄の溶出量が増えます。白湯を作る際はレモン汁を加えれば、味に大きな変化を起こすことなく、効率よく鉄を摂取できるでしょう。
鉄分の1日の推奨摂取量
鉄の推奨摂取量は年齢や性別によって異なります。
18~49歳の日本人であれば以下が推奨摂取量です。
・男性 ⇒ 7.5mg
・女性(月経あり)⇒10.5mg
・女性(月経なし)⇒6.5mg
◯鉄の食事摂取基準(mg/日)
性別 | 男性 | 女性 | ||||||
年齢 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | 耐用 上限量 | 月経なし | 月経あり | 耐用 上限量 | ||
推定平均 必要量 | 推奨量 | 推定平均 必要量 | 推奨量 | |||||
1〜2歳 | 3.0 | 4.5 | 25 | 3.0 | 4.5 | - | - | 20 |
3〜5歳 | 4.0 | 5.5 | 25 | 4.0 | 5.5 | - | - | 25 |
6〜7歳 | 5.0 | 5.5 | 30 | 4.5 | 5.5 | - | - | 30 |
8〜9歳 | 6.0 | 7.0 | 35 | 6.0 | 7.5 | - | - | 35 |
10〜11歳 | 7.0 | 8.5 | 35 | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | 35 |
12〜14歳 | 8.0 | 10.0 | 40 | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | 40 |
15〜17歳 | 8.0 | 10.0 | 50 | 5.5 | 7.0 | 8.5 | 10.5 | 40 |
18〜29歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 8.5 | 10.5 | 40 |
30〜49歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 10.5 | 40 |
50〜64歳 | 6.5 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 11.0 | 40 |
65〜74歳 | 6.0 | 7.5 | 50 | 5.5 | 6.0 | - | - | 40 |
75歳以上 | 6.0 | 7.0 | 50 | 5.5 | 6.0 | - | - | 40 |
女性は1回の月経(5日間前後)により15〜20mgの鉄を損失します。損失する鉄を補うために、意識的に鉄の多い食品を摂ることが必要です。
食品中の鉄には「ヘム鉄(二価鉄)」と「非ヘム鉄(三価鉄)」の2種類があります。
ヘム鉄は主に赤身の肉や魚に多く含まれ、非ヘム鉄より吸収率が5~6倍高いです。非ヘム鉄は野菜や卵、牛乳に多く含まれています。
一般的に鉄の吸収率は15%ほどであり、この吸収率を考慮したうえで鉄分の推奨量と食事の摂取量を考える必要があります。
またビタミンCは三価鉄を二価鉄に還元する効果があり、一緒に摂れば鉄の吸収率を上げることが可能です。
鉄玉子は効果ある?効果なし?鉄分補給できる?
鉄分の1日の推奨摂取量7.5mg〜10.5mgに対し、鉄玉子から出るのは0.1mg未満なので、鉄玉子だけでは鉄分が不足します。
ただ、鉄玉子から溶けだす鉄はヘム鉄(二価鉄)であるため、吸収の効率が高い点はメリットです。
鉄玉子を入れた水を沸騰させる、料理に使うという方法のみでは必要量を補えないので、他に普段の食事からも鉄分を摂取することを心がけましょう。
そのままの食生活であることが前提で、さらに鉄玉子を使ってお湯を沸かしたり料理に使う場合であれば、鉄分の摂取量は上がります。そのため、効果がないわけではありません。
習慣的に使えば、鉄の摂取量の底上げになるため、鉄玉子を使うのが苦でなければ食習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。
酸性の調味料などを使いながら料理を作る場合は効果が高いので、可能な場合はケチャップや食酢、レモン汁などと一緒に鉄玉子を使って料理をしてみてください。
※DHCのサプリメントは鉄分の含有量が多く、おすすめです。
鉄玉子の科学的根拠は?意味ない?
鉄玉子の効果について上述しているとおりで、鉄分摂取に役立ちます。鉄分摂取に役立つ点については科学的根拠もあると言えますが、貧血などの体調不良が治るというわけではありません。
鉄玉子に意味はありますが、あくまで日常的に鉄分を補給するための一つの手段として認識しておきましょう。
鉄玉子をとりすぎるとどうなる?
鉄玉子を使用している場合、鉄の過剰摂取になる可能性は極めて低いです。
もし過剰症になった場合はサプリメント等の食品以外のものの摂り過ぎが原因である場合がほとんどでしょう。
体内にはヘム鉄(二価鉄)の吸収を調節する酵素が存在しています。
食品で摂る場合は酵素が作用して吸収を調節し、過剰症になるのを防いでくれています。
ちなみに鉄の摂り過ぎによる症状は
・便秘
・胃痛
・吐き気
・倦怠感
などです。
貧血の症状が出ている場合はサプリメントの使用も手段の1つですが、独断で量を増やすのは副作用の懸念もあり危険です。
医師等の診断のもと処方してもらい、用法と容量を守って飲む方が無難でしょう。
鉄玉子はためしてガッテンで紹介された?
鉄玉子は2018年4月25日(水)に放送された「ガッテン!貧血・体調不良・だるさの原因判明SP」にて紹介されました。
鉄を多く含む食材が紹介され、鉄を食材以外からとる方法として鉄玉子が登場しています。カンボジアでは魚の形をした鉄玉子を使うことで健康の増進に寄与しているとのこと。
番組では鉄鍋や中華鍋で味噌汁を作る方法がおすすめされていました。水が沸騰してから10分ほど加熱したうえで味噌汁を作れば、鉄が溶け出して鉄分補給が可能であると紹介されています。
また、サプリメントの摂り過ぎについても1日の摂取目安を守るよう注意喚起していました。
鉄玉子の使い方4個
1. 白湯
鉄玉子をやかんやケトル、鍋に入れてお湯を沸かし、鉄が溶けだすように1~10分ほどそのまま沸騰させて粗熱をとれば完成です。
ただし、沸騰すると鉄玉子があちこちに転がるため、やかんやケトルを傷つけてしまう可能性がある点に注意してください。
平らな鉄玉子を使用する、またはティーバッグに入れて使用することで防ぐことが可能です。
2. お茶
白湯とほぼ作り方は同じです。鉄玉子、水、茶葉を入れて沸騰させ、鉄が溶けだすように1〜10分ほど煮出します。
お茶に含まれるタンニンという成分が鉄玉子に付着し、鉄玉子が黒くなることが多いのですが、健康上の影響はありません。
黒くなった鉄玉子をお手入れして落とす必要もないのでそのままで大丈夫です。
3. 炊飯器
お湯を沸かす以外に、炊飯時に使用するのも手段の1つです。
お米を研ぎ、水と鉄玉子を入れて炊飯します。お米がクッションになるので、内釜を傷つけることはないので安心してください。
また、味や香りに変化はありません。炊きあがったらお玉やトングで鉄玉子を取り出しましょう。
鉄玉子にごはんがまとわりついているので、鉄玉子を水につけてごはん粒をふやかしておけばお手入れが楽になります。
4. 味噌汁
鍋に水と鉄玉子を入れてから作り始めます。沸騰してから鉄玉子を入れると、人によっては鉄臭さが気になることがあるためです。
あとは通常と同じように味噌汁を作り、完成したらお玉やトングで取り出します。
鍋に入れたままにすると味噌汁が黒っぽくなることがあるので注意してください。健康上の影響はありませんが、見た目の色味で食欲がそがれる可能性があります。
味噌漉しがある場合は、鉄玉子を入れておくと完成後すぐに取り出すことが可能です。
鉄玉子を使う時の注意点3個
1. 初めて使う場合は下処理をする
鉄玉子を初めて使う場合は下処理しておくことをおすすめします。下処理をせずにそのまま使うと鉄の味がする場合があるためです。
まずは袋から出したら水でよく洗います。
鉄玉子と水をケトルややかんに入れて水を沸騰させて捨てる作業を2~3回繰り返しましょう。
その後使用する場合はそのまま、使用しない場合は水気をしっかりふき取って保管しておきます。
2. やかん・電気ケトルは破損に注意
やかんやケトルでお湯を沸かす場合、破損防止のため以下の点に留意してください。
・鉄玉子は沸かす前に入れておく
・水はたっぷり入れすぎない
・お湯跳ねに気を付ける
鉄玉子を入れる前にお湯を沸かした場合は、お玉や穴じゃくしに鉄玉子を乗せてやかんやケトルの底にそっと置くように入れるとよいです。ただし、沸騰してから入れる場合は火傷に十分注意しましょう。
また、ティーバッグで鉄玉子を包んで使う、平たい鉄玉子を使うのも有効です。
3. やけどに十分気をつける
鉄玉子を扱うときはやけどに十分注意してください。特にお湯から鉄玉子を熱いうちに取り出す際、やけどしやすいです。
お玉や穴じゃくしであれば比較的安全に取り出すことができます。トングだと鉄玉子の重みや丸い形状による掴みにくさもあって落としやすいです。
湯に落とした際のお湯跳ね、足元に落としてしまうことによるやけどが懸念されますので、気を付けましょう。
鉄玉子の寿命
鉄玉子に寿命はなく、50年以上は使用可能です。正しい使用方法やお手入れ方法で使えば、何世代にもわたって受け継いでいくことができます。
寿命であるかどうかの判断基準は鉄玉子を長時間放置し、落としきれないほどのサビが発生してしまったかどうかでしょう。
サビが出始めたときは表面に発生しますが、サビが表面に発生すると膜を張るようにして一度サビの発生が止まります。
その時点でサビを落とすことができればよいのですが、長時間放置すると内部に向かってサビが広がっていきます。
内部までサビてしまうと、表面にサビを落としてもあまり効果がない可能性が高いです。
鉄玉子を水に入れっぱなしは?
鉄玉子を水に入れっぱなしにすると、サビが発生しやすいです。水と鉄が化学反応を起こして酸化してしまいます。
鉄玉子にサビが発生して茶色い水になり、見た目も悪く、鉄の味が強い水になりますので美味しく飲むことができない可能性が高いでしょう。
一般的に、鉄玉子は温度が下がるときにサビるスピードが上がります。そのため、お湯を沸かし終わった後は、お湯の温度が下がる前にお玉やトングを使って取り出すことが大切です。
また、鉄玉子をお湯ではなく水出しで使う方もいますが、長時間水に浸けることになるのでおすすめできません。さらに、あまり衛生的ではないため体調を崩す原因となる可能性があります。
鉄玉子を洗剤で洗ってしまった…
基本的には鉄玉子を洗剤で洗うとサビやすくなるので、使用しないことをおすすめします。
もし洗剤で洗ってしまったら、流水で表面についた洗剤を十分に落としてから水気を拭き取り、空気に触れないよう保管してください。
鉄玉子は流水を使って手でこすりながら洗います。料理に使った後も同じ洗い方で大丈夫です。
ただ炊飯時に使った場合は、すぐに洗おうとするとごはん粒がくっついてなかなか流すことができません。その場合は水にしばらく浸けておき、ごはん粒をふやかしてから洗いましょう。
鉄玉子のお手入れ方法3個
鉄玉子を正しくお手入れして長持ちさせるコツをご紹介します。
1. 濡れたまま放置しない
濡れたまま放置するとサビやすくなってしまうので避けましょう。熱いうちにお玉やトングで取り出し、少しそのまま置いておくと余熱で表面についた水分が蒸発します。
料理に使う場合は、やけどをしないように流水で洗いましょう。
キッチンペーパーなどでよく水気を拭き取り、乾いたキッチンペーパーに包んでラップをし、さらにジッパー付き袋に入れれば長持ちします。
2. 食酢は使わない
食酢は鉄を溶かす作用があるのでサビ落としに有効ではありますが、結果的にサビやすくなってしまうので使わない方が鉄玉子が長持ちします。
鉄を溶かすだけでなく、酸化させる作用も持ち合わせているからです。そのため内部までサビてしまい、表面のサビを一生懸命取っても取りきれません。
赤サビが目立ってきたら金だわしで軽くこすって落としましょう。
3. 緑茶で煮て被膜を作る
空気に触れさせない工夫として、緑茶で煮る手段もあります。緑茶で鉄玉子が湯が真っ黒になるまで煮れば、化学反応が起こって鉄玉子に黒色の被膜ができます。
この被膜は健康上に害はなく、被膜のおかげで空気に触れにくくなるため有効な手段です。
煮るのも煩雑と感じる方は、熱いうちに緑茶に浸したキッチンペーパーで拭くだけでも効果があります。使い続けると被膜が落ちてしまうので、使ったら定期的に行うとより長持ちします。
まとめ
鉄玉子を入れて沸騰させたお湯に含まれる鉄の量は、1日に必要な鉄の量に対してごくわずかです。
しかし、食生活を大きく変えずに鉄が摂取できる、日々の積み重ねで鉄摂取量の底上げが可能、この点はメリットです。
白湯やお茶、ごはん、味噌汁など用途はさまざま。熱いうちに取り出し、そのまま表面の水分を飛ばしてキッチンペーパーで包んだらジッパー付き袋に入れて保管すると長持ちします。鉄玉子で手軽に鉄不足を解消しませんか?